モンゴル横綱の強さの秘密と歴代の現在|白鵬・照ノ富士から次世代へ
大相撲の平成から令和にかけての歴史を語る上で、モンゴル出身力士たちの圧倒的な存在感を外すことはできません。第68代横綱・朝青龍の誕生を皮切りに、白鵬、日馬富士、鶴竜、そして怪我を乗り越えて頂点に君臨した照ノ富士に至るまで、モンゴル勢は土俵の中心で時代を牽引してきました。
彼らはなぜこれほどまでに強さを誇り、土俵を支配することができたのでしょうか。本記事では、歴代モンゴル出身横綱の輝かしい実績や強さの原点を深掘りするとともに、角界を揺るがした騒動の真相、親方襲名や独立に関わる日本国籍(帰化)問題、さらには引退後の知られざる現在地や次代の横綱候補までを徹底取材の視点から分かりやすく解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:朝青龍から照ノ富士まで計5人のモンゴル出身横綱が誕生し、白鵬の45回優勝をはじめ数々の大相撲記録を塗り替えた。
- 要点2:伝統格闘技「ブフ」で培われた体幹・柔軟性とハングリー精神が、日本人力士を圧倒する無類の強さの源泉。
- 要点3:年寄名跡取得に伴う日本国籍取得や部屋継承・独立の動きが進む一方、豊昇龍や霧島ら次世代の覇権争いにも注目が集まる。
【歴代一覧】大相撲の歴史を変えたモンゴル出身横綱5人の足跡

平成以降の大相撲界において、モンゴル出身横綱が打ち立てた金字塔は枚挙にいとまがありません。まずは土俵を席巻した歴代5人の横綱のプロフィールと実績を振り返ります。
大相撲の長い歴史の中で、外国出身の横綱はハワイ出身の曙、武蔵丸に続き、第68代横綱・朝青龍がモンゴル出身として初の栄冠を掴みました。その後、第69代・白鵬、第70代・日馬富士、第71代・鶴竜と続き、一時期は番付上位をモンゴル勢が独占する黄金期を築き上げました。さらに第72代・稀勢の里の昇進を挟み、第73代横綱・照ノ富士が令和の土俵を力強く支えてきました。
特筆すべきは、彼らが単に横綱になっただけでなく、大相撲の記録そのものを大きく塗り替えた点です。白鵬が残した幕内最高優勝45回、通算1187勝という大記録は、今後何十年も破られない金字塔として角界の歴史に刻まれています。
なぜモンゴル力士は強いのか?ブフの身体能力と知られざる背景

モンゴル出身力士が角界で圧倒的な勝率を誇る背景には、文化、身体的素養、そして過酷な環境が生んだメンタリティが密接に関わっています。
最大の要因として挙げられるのが、幼少期から親しむ伝統格闘技「ブフ(モンゴル相撲)」の存在です。ブフは土俵のような枠がなく、足の裏以外が地面についたら負けというルールで行われます。この競技特性上、相手を倒すための絶妙なバランス感覚、内掛けや足取りといった多彩な足技、強靭な体幹と腰の粘りが自然と養われます。白鵬の柔軟な立ち合いや朝青龍の電光石火の投げ技は、まさにブフの技術が土台にありました。
また、遊牧生活や厳しい自然環境で育まれた骨密度の高さと筋力、さらには「異国の地で成功して家族を支える」という強烈なハングリー精神も大きな原動力です。1992年に旭天鵬ら6人がパイオニアとして来日した大相撲モンゴル勢の歴史は、言葉や文化の違い、厳しい部屋の掟を乗り越える苦難の連続でした。その道を切り拓いた先人たちの覚悟が、後続の力士たちにも脈々と受け継がれています。
【朝青龍・白鵬・照ノ富士ら】波乱の引退理由と気になる現在の姿

土俵上で圧倒的な強さを誇ったモンゴル出身横綱たちですが、その土俵人生の幕引きや引退後の歩みは実にドラマチックです。
朝青龍(ドルゴルスレン・ダグワドルジ)は、2010年1月場所中に起きた知人男性への暴行騒動の責任を取る形で、29歳の若さで電撃引退しました。引退後はモンゴルへ帰国し、実業家として銀行、サーカス団、不動産、農業など多角的なビジネスを展開。モンゴル国内屈指の富豪として知られ、日本とモンゴルの友好親善にも尽力しています。
白鵬(現・宮城野親方/白鵬翔)は2021年9月に現役を引退。日本国籍を取得して年寄「間垣」から「宮城野」を襲名し、宮城野部屋を継承しました。しかし、元幕内・北青鵬の暴力問題監督責任を問われ、日本相撲協会から委員から年寄への降格処分と減俸を受け、部屋は一時当面閉鎖・伊勢ヶ濱部屋への転属という厳しい措置を受けました。指導者としての手腕が改めて試される試練の時を迎えています。
日馬富士(ダワーニャム・ビャンバドルジ)は2017年、巡業中の貴ノ岩に対する傷害事件の責任を取って引退。その後、母国モンゴルで小中高一貫の教育機関「新モンゴル日馬富士学園」を設立・開校し、理事長として先進的な教育環境の提供に情熱を注いでいます。
鶴竜(現・音羽山親方/マンガラジャラブ・アナンダ)は2021年3月に引退後、陸奥部屋付きの親方として後進の指導にあたり、2023年12月に音羽山部屋を新設して独立を果たしました。誠実で温厚な人柄と流暢な日本語を活かし、丁寧な弟子育成を進めています。
照ノ富士(杉野森正博/ガンエルデネ・ガントゥルグ)は、両膝の大怪我と糖尿病などの内科系疾患により、大関から一時は序二段まで陥落。そこから不屈の闘志で奇跡の復活を遂げ、横綱へと登り詰めました。数々の試練を乗り越えて幕内優勝10回を数え、一人横綱として令和の角界を力強く支え続けています。
大相撲の入門制限ルールと日本国籍取得(帰化)をめぐる角界の掟
モンゴル勢の躍進の一方で、日本相撲協会は相撲の伝統維持と国際化のバランスを取るため、外国出身力士に対する制度改革を行ってきました。
現在、外国出身力士の入門には「1部屋あたり外国出身力士は1人まで」という厳格な制限ルール(外国人力士枠)が敷かれています。過去には1部屋2名まで可能だった時期もありましたが、過度な偏りを防ぐために2002年以降段階的に引き締められ、現在では帰化していない外国人力士は部屋に1名しか在籍できません。
さらに、引退後に日本相撲協会に残って親方(年寄名跡襲名)になるためには、日本国籍の取得(帰化)が必須要件となっています。これは相撲協会の規定によるもので、かつて朝青龍や日馬富士は日本国籍を取得せず引退と同時に角界を去りました。一方、白鵬や鶴竜、照ノ富士は日本国籍を取得し、親方として日本で後進を育成する道を選びました。国籍の選択は、母国への愛着と日本相撲界への献身の間で揺れる力士たちにとって、極めて重い決断となっています。
【歴代外国人横綱】幕内最高優勝回数ランキング
外国出身力士がどれほど大相撲の歴史に足跡を残してきたか、幕内優勝回数上位のランキングで確認してみましょう。
歴代外国人横綱の幕内最高優勝回数は以下の通りです。
1位:白鵬 翔(モンゴル)45回
大相撲史上最多の優勝回数を誇り、昭和の大横綱・大鵬の32回を大きく塗り替えた不滅の大記録です。
2位:朝青龍 明徳(モンゴル)25回
年間6場所完全制覇(2005年)など、全盛期には圧倒的な強さで土俵を支配しました。
3位:武蔵丸 光洋(アメリカ・ハワイ)12回
巨体を活かした重い突き押しと安定感抜群の相撲で一時代を築きました。
4位:曙 太郎(アメリカ・ハワイ)11回
外国出身初の横綱として若貴兄弟と激闘を繰り広げ、相撲ブームを牽引しました。
5位:照ノ富士 春雄(モンゴル)10回
大怪我と病気による序二段陥落からの復活劇を遂げ、二桁優勝の大台に到達しました。
6位:日馬富士 公平(モンゴル)9回
軽量ながらスピードと鋭い立ち合い、強烈な引き落としや投げで賜杯を抱きました。
7位:鶴竜 力三郎(モンゴル)6回
相手の力を巧みにいなす変幻自在の取り口と安定した技術で優勝を重ねました。
上位7名のうち5名をモンゴル出身者が占めており、平成から令和にかけての相撲史がいかにモンゴル勢を中心に動いていたかが分かります。
豊昇龍・霧島ら次世代の台頭|ポスト照ノ富士を担うモンゴル力士の系譜
照ノ富士の後の世代においても、モンゴルの血筋を受け継ぐ実力派力士たちが大関・三役でしのぎを削っています。
その筆頭が、朝青龍の甥にあたる豊昇龍です。叔父譲りの鋭い眼光と抜群の運動神経を誇り、多彩な足技や豪快な投げ技で観客を沸かせています。精神面での成熟とともに綱取りへの期待が常に寄せられる存在です。
また、元横綱・鶴竜と同じく技術派として評価の高い霧島(元・霧馬山)も、安定した取り口と強靭な足腰を武器に大関陣の一角として存在感を示しています。さらに若手世代にもモンゴル出身の有望株が控えており、日本人実力派力士たちとハイレベルな覇権争いを繰り広げています。モンゴル力士の系譜は途絶えることなく、新たな進化を遂げながら土俵を熱く盛り上げています。
【モンゴル 横綱】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:歴代でモンゴル出身の横綱は何人いますか?
A1:これまでに誕生したモンゴル出身横綱は、朝青龍、白鵬、日馬富士、鶴竜、照ノ富士の計5人です。大相撲の歴史上、外国出身横綱全体ではハワイ出身の曙、武蔵丸を含めて計7人となります。
Q2:外国出身力士が親方になるには日本国籍が必要ですか?
A2:はい、日本相撲協会の規定により、引退後に日本相撲協会の年寄(親方)として残るためには日本国籍の取得(帰化)が義務付けられています。白鵬(宮城野親方)、鶴竜(音羽山親方)、照ノ富士らは日本国籍を取得しています。
Q3:なぜ1つの相撲部屋にモンゴル力士は1人しか入れないのですか?
A3:日本相撲協会が定める「外国出身力士枠」のルールにより、1部屋につき外国籍力士は1人までと定められているためです。国内力士の育成機会の確保や協会の国際化バランスを維持するための措置として運用されています。
まとめ:モンゴル横綱が遺した功績とこれからの大相撲
モンゴル出身横綱たちが大相撲にもたらした影響は計り知れません。伝統格闘技ブフ仕込みの驚異的な身体能力と、異国の地で頂点を目指す不屈の闘志は、相撲の競技レベルを一段高いステージへと引き上げました。
引退後も母国での教育・事業展開で社会貢献を果たす者、日本国籍を取得して親方として弟子の育成に情熱を注ぐ者など、それぞれの道で新たな存在感を示しています。豊昇龍や霧島をはじめとする次世代の力士たちが、歴史を築いた偉大な横綱たちの背中を追い、これからどのような熱戦を見せてくれるのか、土俵の未来から目が離せません。 (出典: モンゴル 横綱(Yahoo!ニュース))